大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和29年(ク)4号 決定 1954年3月15日

東京都北区中十条三丁目九番地

抗告人

佐藤正吉

右代理人弁護士

山中静次

同都板橋区板橋町二丁目七〇四番地

相手方

河野一雄

右抗告人は、東京高等裁判所昭和二八年(ウ)第五四八号判決に対する異議事件につき、同裁判所が昭和二八年一二月一六日なした異議却下決定に対し、抗告の申立をしたので、当裁判所は、裁判官全員の一致で、次のとおり決定する。

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

最高裁判所が抗告に関して裁判権をもつのは、訴訟法において特に最高裁判所に抗告を申立てることを許した場合に限られる。そして民事事件については、民訴四一九条ノ二に定められている抗告のみが右の場合に当ることは、当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(ク)第一号同年一二月八日決定参照)。従つて、最高裁判所に対する抗告理由は同四一九条ノ二によつて、原決定において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断を不当とするものでなければならない。ところが、本件抗告理由中には違憲をいう点もあるが、その実質は要するに訴訟法違反ないし事実誤認の主張に帰し、適法な違憲の主張と認め難い。(なお原決定の維持した原判決は、一応憲法適否の判断を示しているけれども、元来、原審における上告理由中、憲法違反について云々した部分は実質上、訴訟法違反ないし事実誤認の主張にすぎなかつたことが記録上明白であるから、これに対し原判決のなした憲法適否の判断は、法律上、無用の判示というべきであり、したがつて、たとえ右判示を攻撃しても、なんら適法な特別抗告の理由とならない)。結局本件抗告理由はすべて右の場合に当らないことは、抗告理由自体により明らかであるから、本件抗告を不適法として却下し、抗告費用は抗告人の負担とすべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例